2024年2月5日月曜日

農業者による農業者のためのお金の話

最近、新規就農された方(研修中含む)と税金の申告や年金、保険、補助金といったお金まわりのことについて話す機会がありました。

やはり、お金のこととなると気軽に相談できる機会も限られるようで、どうしたらいいのか分からない部分がままあるようです。

そんなわけで、あくまでも1つのサンプルとしてですが、私の場合を簡単に書いてみようかと思います。(個人経営体で、法人化はしていません)

誰かの参考になれば幸いです。

(私の認識が間違っていることもありますので、鵜呑みにせず、ご自身でしっかり調べるようにしください)


【確定申告】
ちゃんとやる。

まだ収入がない場合も、住民税の申告はちゃんとやる(→国民健康保険の軽減を受けるため)。

農業の収入が発生したら青色申告をする。要件を満たし65万円の控除を受ける。経営の状態をしっかり把握する。


【国民健康保険】
ちゃんと払う。

(世帯)収入が少ない場合は(世帯全員が)住民税の申告をしていれば軽減される。


【年金】
国民年金はちゃんと払う。払っていれば終身の老齢基礎年金だけでなく、万が一の場合には障害年金や遺族年金が受給できる。

払えないときは、確実に免除申請をする。免除申請をすれば受給資格を得られる。保険料の半分は税金による負担なので未納はただただ損。

増額手段は付加年金、農業者年金、iDeCo(個人型確定拠出年金)、国民年金基金、小規模企業共済から選択。それぞれ掛金の税制(社会保険料控除 or 小規模企業共済等掛金控除)や受給の仕方が異なるので、家族構成や年齢、働き方、好み等に合わせて検討。

私は、付加年金を納付の上で、iDeCoに加入しています。ただし、現状NISA(少額投資非課税制度)への積み立てを優先しているため(理由後述)、iDeCoの掛金は最低額の5,000円にしています。

iDeCoは、加入年数によって一時金として受給する際の退職所得控除の額が決まるので、最低額からでも早めに加入した方が有利です。NISAの枠が(いつの日か)埋まったら、もしくは資金に相当な余裕ができたら退職所得控除の額と調整して掛金を増額予定です。


・参考


【NISA】
今年から始まった新しいNISAはぜひ活用したいところです。枠も従来より大幅に大きくなり、将来への積立の目標値としてちょうどいいです。皮算用ではありますが、毎月5万円を年5%の複利運用で30年間積み立てると約4,000万円になります。

iDeCoは掛金が所得控除の対象となる点でNISAより有利ですが、私は突然の資金需要への対策としてNISAを優先しています。

・参考
農家の資産運用(cultivationdata.net)


【保険】
青色申告をして農業共済の収入保険に入る。その他、事業内容に応じて適宜入る。

さわの場合は、水稲関連の農機具共済や農産物加工をやっているのでPL保険に入っています。その他、個人として自動車保険、火災保険、個人賠償保険は必須。

生命保険や医療保険等についても、自身の状況に合わせて検討。ただし、こちらは一般論として入りすぎに注意。どういう状況に備えるものかを明確にすることが変な保険に入らないためのコツ。

ちなみに、保険に関してはネットで入れるものが良いとも限らず、代理店経由じゃないと加入できないものもあります。

・個人的に参考になった情報
センパイちゃんねる(YouTube チャンネルですが、保険についての冷静な考え方がとても参考になります)


【補助金】
活用できる補助金は活用。ただし、将来の選択肢を制限されることもあるので取捨選択は必要。また補助金ありきで事業を作ると長続きしない(個人の印象)。

私の場合、加工場を作るために市の補助金を利用しましたが、青年就農給付金(現在の農業次世代人材投資資金)については、撤退の判断がしづらくなるという理由で利用しませんでした。


【借入金】
以前は、農林水産省が出している「新たな農業経営指標」の借入金に関する2つの指標を目安にしていましたが、いつの間にかこの指標は使われなくなった(?)ようです。ページがまるっと消えていました。まあ、新たなと言いつつ、すでに10年以上前に作られたものですからね。

参考までに、指標では以下のようになっていました。

・売上高借入金比率
 計算式:借入金/収入 計
 望ましい水準:0~100%

・生産単位当たり借入金
 計算式:借入金/耕作している農地面積 合計
 望ましい水準:0~130 千円/10a

借入金に関する指標を2つとも満たすには、10a当たりの売上高が13万円より多いのか、少ないのかにより、どちらの望ましい水準の上限がキャップになるかを把握する必要があります。

多ければ「生産単位当たり借入金」の上限が、少なければ「売上高借入金比率」の上限がキャップになります。

ただ、事業として持続的な発展を目指している場合は別として、生活を支えられるだけの金額を稼げればいいという経営であれば、借り入れはしないに越したことはないと、個人的には思っています。


【番外 - クラウドファンディング】
支援者の立場での感想として、公共性の高いものや、Kickstarter 的なプロジェクトは支援しやすいです。もしくは、本当に寄付として、というもの。

一方で、資金の使い道にはてなが浮かぶようなものは関わらない方がいいのかなと。あとは、素直に応援の気持ちで支援したものでも、その後の活動や報告がないと、どうしても微妙な気持ちにはなりますね。


***

独立して農業をやっていくにあたっては、まずは何より生活基盤を固めることが肝要かと思います。

具体的には、「生活費+備え(保険や積立等)」で年間どのくらいの金額が必要なのかを把握して、その上で経営計画を立てるということですね。

仕事ですから、結局はどのくらいの労働力を投入し、どのくらいのお金の出入りを目指すのかということになります。その実現に向けて、最適な規模はどの程度のものなのか。ここがピタッと見極められると、安定感が出てくるんじゃないかと思います。


雪だるま猫