東大卒、農家の右腕になる。――小さな経営改善ノウハウ100
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著者の佐川氏が阿部梨園で行った経営改善をまとめた『阿部梨園の知恵袋』は、公開当時にニュースか何かで知り、拝見したことがありました。
本書は、左川氏が農家の右腕(基本的に生産活動はしない)になるまでの経緯と、なってからの阿部梨園での活動を記した第1部、具体的な100のノウハウを載せた第2部という構成になっています。
読んでみて、まず全体として共感する部分が多かったです。情報のオープン化については特にですね。
私は実家に戻って就農したので、家族経営の農業の中でコツコツ小さな経営改善をやり続ける大切さは本当に身に染みています。(このブログはその記録でもあります)
紹介されている経営改善の内容自体は、専門性を必要とせず、一般的なサービスの利用やちょっとした工夫の数々です。プラスを生み出すのではなく、惰性でマイナスになっている部分を一つずつ丁寧に埋めていくというイメージですね。
乱暴に言ってしまえば、誰にでもできることではあるのですが、じゃあ経営者自身が日々の農作業の合間を縫って改めて冷静な目で経営全体を俯瞰して、根気強く改善を実行していけるのかと言ったらけっこう難しいと思うのですよね。得意不得意もありますし。親元就農では、やりたくても世代間の衝突があってうまく進まないという場合も多いでしょう。
そこで、著者のような人材の出番となるわけですね。
おそらく、今まで(10数年前くらいまで?)であれば県や市町村の担当部署や JA、有志の団体等がある程度似たような役割を担っていたのかもしれませんが、現代社会のスピード感にはなかなか追いつけていない(部分が多い)のが実情なのかなと思います。
(一方で、今後、人工知能をはじめとしたテクノロジーがどの程度この辺の役割を代替できるようになるのか、もしくはできないのかというのは気になるところ)
昨今、農業も厳しい状況の中にあります。しかし、焦って雑に攻めの一手を打つと、かえって自身の首をしめることになりかねません。まずは細かい改善の積み重ねで足元を固め、安定した経営体制と十分なゆとりを作ることが肝要なのかなと思います。財政基盤が脆弱で、労働力に限りがある小規模農家であれば尚の事ですね。
最後に、本書に関係ありませんが……
私も農業に限らず相談を受けてアドバイスやお手伝いをするといった機会がたまにあります。小規模事業体の場合、よく分からないからと事務機器やソフト等を業者に丸投げするのは基本的にやめた方がいいですね。
最初はよくても、徐々に必要なものと乖離してきます。しかし、途中でやめたら違約金が発生。いざ、経営改善を実行しようとしたときに大抵足を引っ張ります。
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ゴールデンウィークは、夫婦共通の友人の結婚式で横浜に出かけました。久しぶりに学生時代の友人に会えて楽しかったです。
帰りに、初のカワスイ川崎水族館へ。2020年に開館したそうです。お出かけ先では水族館に行くのが定番になっています。
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