さわでは原木椎茸をビニールハウスでの施設栽培をしていますが、暖房等による加温はしていません。そのため、天候の影響を直接的に受けます。
そこで、気象庁より提供されている観測所の気象データを元に、ビニールハウス内の温度の推定を試みてみました。
これができますと、例えば、予報データから収穫予測モデルなんかも作れそうです。
今回の分析にあたり、ビニールハウス内のデータはRaspberry Pi製ロガーで15分毎に取得(温湿度センサーモジュールはDHT22を使用)。観測所のデータは気象庁の過去データを利用しました。期間は、2021年10月2日〜2022年2月22日の約4か月半です。
まずは、15分毎のデータを1時間平均に変換してビニールハウスと観測所(小名浜)の温度差を確認します。
ビニールハウス内の温度が高くなるにつれて観測所との温度差がばらけていますね。
1時間平均でこれだけばらけていますので、ある瞬間における観測所の気温(10分毎のアメダスのデータ等)からビニールハウス内の温度を推定するのは難しそうです。
ビニールハウスなので、ばらけている原因としては日射量の影響が大きそうと想像できます。
ただ、1時間平均ですと前の時間から積算での影響がありそうなので何らかの処理が必要そう……なものの、どうすればいいのか分からないので、その辺の影響を無視できるように1時間平均から1日平均に変換。その上で日照時間と温度差の関係を見てみます。(小名浜には日射量のデータがないので日照時間を使用)
予想外にばらけていますね。1日平均であれば日照時間の影響はひとまず考えなくて良さそうです。
という前段階を経て、1日平均の観測所の気温とビニールハウス内の温度の関係を見てみます。
ちなみにこれは(当然のことながら)、観測所と栽培地の位置関係や、気温の上昇・降下に対する人為的なビニールハウスの温度管理(窓や遮光シートの開閉等)といった諸々の影響を全て含んだ数値になっています。
……予想外にきれいに並んでいます。
「観測所の気温(1日平均)」を説明変数、「ビニールハウス内の温度(1日平均)」を被説明変数として「XLMiner Analysis ToolPak」で単回帰分析を行った結果が以下。
補正R²が0.9以上、P値も0ですので、「観測所の気温(1日平均)」で「ビニールハウス内の温度(1日平均)」を説明できていると考えて問題なさそうです。
観測所の気温(1日平均) = x とした場合、ビニールハウス内の温度(1日平均) = 0.741*x + 7.85
という回帰式が得られました。
観測所の気温(1日平均)が5℃なら、ビニールハウス内の温度(1日平均)は11.6℃
観測所の気温(1日平均)が10℃なら、ビニールハウス内の温度(1日平均)は15.3℃
観測所の気温(1日平均)が20℃なら、ビニールハウス内の温度(1日平均)は22.7℃
ということになります。体感には近い気がします。
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当初の想定としては、気温だけでなく日照時間や湿度、風速あたりの複数の説明変数が必要になるのではないかと思っていたのですが、案外気温のみのシンプルな回帰式になりました。
これが実務において活用できるものなのか、今後検証していきたいと思います。
(雰囲気でやっていますので、いろいろ間違えているかもしれません。ご了承ください。)
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