そこで、データ化の全体像について、自身の頭の整理も兼ねて書いてみたいと思います。
▼ 栽培施設と栽培の流れ
原木椎茸の栽培には、3つのビニールハウスを使っています。
・ホダ化ハウス
→植菌からホダ化を行うビニールハウス
・発生ハウス
→浸水後、ホダ木を設置して収穫を行うビニールハウス
・休養ハウス
→収穫後、ホダ木を設置して休養を行うビニールハウス
シーズン中(10月頃〜翌5月頃)の栽培の流れは以下のようになります。
ホダ化ハウス→(浸水→発生ハウスへ移動→収穫→休養ハウスへ移動) × 3〜4回
ホダ化が済んだら、あとは発生ハウスと休養ハウスを行ったり来たりしながら、浸水と収穫を3、4回繰り返します。
データ化は、浸水後から収穫までの発生ハウス内での工程で行っています。
▼ IoT機器を活用して基礎情報を取得
IoT機器を活用して、発生ハウス内で温度と湿度を取得します。これが、基礎情報となります。
測定には、Raspberry Pi ZeroとDHT22(AM2302)センサーで作った温湿度データロガーを使用しています。(参考:「Raspberry Pi Zero WHを使って、格安で温湿度データロガーを作る」)
基礎情報を元に、栽培管理の補助となる『温度・湿度の通知機能』と『栽培管理のためのデータ閲覧ページ』を作成します。
温度・湿度の通知機能は、発生ハウス内の温度や湿度が設定した値よりも上がったり下がったりした際に通知がされます。通知には、LINEを使用しています。
対応が必要であれば、温度を下げたり、湿度を上げたりといった操作(ハウス窓の開閉や撒水等)をすることになります。この部分も、自作での自動化は可能そうですが、さわの場合は、栽培施設が自宅から徒歩1分圏内なので、手動でやっています。栽培施設が遠い場合には、費用対効果を考慮の上、自動化するのがよさそうです。
栽培管理のデータ閲覧ページでは、以下のデータを表示しています。
・直近の測定温度・湿度
・過去24時間の最高温度、最低温度
・温度、湿度、有効温度量のグラフ
・積算温度
・温度の平均
・温度の標準偏差
・湿度の平均
・湿度の標準偏差
「積算温度」「温度の平均」「温度の標準偏差」「湿度の平均」「湿度の標準偏差」は、それぞれ過去1日間、3日間、10日間で算出。有効温度量、積算温度は、「原木椎茸の有効積算温度の計算」に沿って計算しています。
ページは、GAS(Google Apps Script)にて作成しています(参考:「GASで動的な栽培管理用データ閲覧Webページを作る」)。GASであれば、自前でサーバーを準備する必要がなく、基本的に維持費もかかりません。スマホからも確認ができます。
▼ 栽培管理情報をデータ化(インプット)
栽培管理情報を以下の通りデータ化します。
発生開始(浸水終了後、発生ハウスの棚にほだ木を設置)時に、以下の項目を記録。
・タイムスタンプ
・棚番号
・品種
・使用回数
・浸水時間
収穫時に、以下の項目を記録。
・タイムスタンプ
・棚番号
・収穫タイミング
・品質
収穫タイミングや品質は、入力する人によってぶれがでないよう基準を作っておくことが必要になります。
記録には、Googleフォームを使用しています。タイムスタンプは自動的に記録されます。
▼ 得られるデータ(アウトプット)
基礎情報と栽培管理情報を組み合わせることで、各棚で発生させた原木椎茸について以下のデータが得られます。
・収穫までの積算温度
・温度 - 平均
・温度 - 標準偏差
・湿度 - 平均
・湿度 - 標準偏差
・収穫までの時間
これらを品質と照らし合わせ、栽培管理にフィードバックします。
以上が、(現状の)原木椎茸栽培のデータ化の全体像になります。
システム構築にかかった費用は、温湿度データロガーの作成費5〜6,000円のみです。運用にあたっては、通信費が月々200円程度かかります。
実のところ、いろいろ変えやすい小規模な農園こそ、データを活用した農業って相性が良いような気がしています。
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昨シーズンのデータを見ますと、目指す品質としては、温度の平均が10〜22℃、標準偏差が5〜8あたりが管理の目安になりそうかなと思われます。湿度は正確なデータが取れませんでしたので、今シーズンに期待。
標準偏差というのはデータのばらつきなので、温度の場合は、寒暖差ですね。
休養ハウスのデータの取得等、まだまだ他にもやってみたいことはたくさんあります。他の作物とかも。まぁ、焦らず一歩ずつですね。
よく言われることですが、実感としても、勘や経験でやっていたことを改めてデータとして見ると理解が深まりますね。
農業、おもしろいですね。