原木椎茸の施設栽培は、2月頃に植菌、それから9月頃までホダ木を作り、秋から収穫を行います。収穫後は休養をはさみ、翌年春までホダ木あたり4回程度収穫します。
原木椎茸の栽培には温度、湿度、水、風、光等、もろもろの環境要素が影響しますので、その土地、その設備に応じて適宜調整をするとこになります。
しかしながらこれまで、雑な言い方をしてしまうと「勘」でこの調整をしていたのですね。もちろん、セオリーとなる栽培方法に沿ってですけども。
そこでスマート農業への取り組みの第一歩として、原木椎茸栽培の定量化を試みてみようと思います。
定量化により、判断基準が明確化し、調整の精度が上がったら素晴らしいですよね。
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では、ひとつずつ進めていきます。
まずは一番分かりやすい指標となる積算温度の計算です。単位は「℃日」。
原木椎茸の発生に必要な積算温度は4000〜4500℃日程度です(品種による)。有効な温度の計算には森永(1989)によるシイタケ菌の特性に合わせた以下の式を使うことにしました。
T:気温(℃)
TU:有効な温度の量
・T ≦ 5℃ or 32℃ < T
TU = 0
・5℃ < T ≦ 15℃
TU = T - 5
・15℃ < T ≦ 23℃
TU = -46.7 + 20.9 × log( T )
・23℃ < T ≦ 32℃
TU = 18 - 2 × ( T - 23 )2 / 9
出典:森永鉄美(1989). 「食用きのこの発生と温量(Ⅰ)−有効積算温度の検討−」『日林九支研論集』 No.42, pp.289-290.
グラフにすると以下のようになります。
23℃の時に最も有効な温度の量が多くなります。シイタケ菌の特性がよく分かりますね。
有効積算温度はこの有効な温度の量の総和になります。
スプレッドシートやエクセルではIFS関数を使うと簡単に計算できます。気温がD列に入力してあるとすると以下のようになります。logは自然対数なのでLN関数ですね。
=IFS($D2<=5,0,32<$D2,0,AND(5<$D2,$D2<=15),$D2-5,AND(15<$D2,$D2<=23),-46.7+20.9*LN($D2),AND(23<$D2,$D2<=32),18-2*SUMSQ($D2-23)/9)
上の画像ではE列にこの式が入っています。これをSUM関数で日にち分足すと有効積算温度がでます。
ということで、先日作ったGASで気象データを取得し、外気温(1日の平均気温)での有効積算温度を算出してみました。
すると、今年植菌をした2020年2月から8月いっぱいまでの有効積算温度は2242.9℃日でした。
9月からぼちぼち発生をかけ始めるのですが、必要となる4000〜4500℃日には全く届いていません。やはり2月から5月中頃までの気温が低いのですね。だからこそ、植菌後速やかにシートをかけて保温することが重要となってきます。こうして数値で見ると一つ一つの作業の意味が理解しやすいですね。
来年の植菌までにはデータロガーを入手して、実際のホダ化中の温度をデータ化できるようにしたいと思います。
さてさて、6次化も面白かったですが、スマート化もまた面白さ満点ですね。コツコツ進めたいと思います。
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